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  • 中小企業共通EDIによるDX推進への期待

  • 中小企業共通EDIによるDX推進への期待
  • 公開2021/07/21  更新2022/06/23

  • 中小企業共通EDIは企業間データ連携を推進する国の政策に盛り込まれました。中小企業のDX推進手段として普及促進が期待されています。

記事内容

「経済財政運営と改革の基本方針2021」(令和3年6月18日閣議決定)に、官民挙げたデジタル化の加速として、中小企業共通EDI等の普及促進を図る旨の記載が盛り込まれました。当資料は内閣府サイトからPDFで入手可能です。

経済財政運営と改革の基本方針2021
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2021/decision0618.html
(2021/7/21 引用)

具体的な記載内容についてご紹介します。資料上のページ数で11ページ目(PDFファイルとしては16ページ目)にあたる以下の部分に記載があります。

「2.官民挙げたデジタル化の加速」
「(2)民間部門におけるDXの加速」
~抜粋~
「企業全体で取り組むデジタル投資を税制により支援し、特に中小企業においては、IT導入サポートを拡充し、そのDX推進を大胆に加速するほか、標準化された電子インボイスや、金融機関による支援等も通じた中小企業共通EDI等の普及促進を図る。」

また「中小企業共通EDI」に対する注釈として、次のように記載されています。

「2023年10月のインボイス制度への移行、2024年1月のISDNサービス終了が迫る中、中小企業における普及促進が期待される。」

中小企業共通EDIへの期待

これらのように、中小企業共通EDIへの期待が高まっています。その内容についてもう少し掘り下げてみましょう。まず、企業にとっての外的要因である「インボイス制度」[1]や「ISDNサービス終了」[2]への対策としての効果が見込まれます。

「インボイス制度」により経理処理の煩雑化が想定されることから、対策として今まで以上にIT導入の重要性が高まります。中小企業共通EDIの導入によって請求情報のデータ化(および標準化)が推進されれば、電子インボイス等の実現に繋がります。

「ISDNサービス終了」により(ディジタル通信モードによる)EDIシステムは利用できなくなる為、システム改修が必要になります。インターネットEDIの形態である中小企業共通EDIへの移行が対処策となります。

一方で、中小企業共通EDI導入への動機付けとしては、企業にとっての内的要因に向けたメリットが感じられることも必要でしょう。どのようなメリットが期待されるのか、おさらいしてみましょう。

  • 伝票・書類のチェックの手間を軽減(ペーパーレスの実現)
  • 入力の手間を軽減し、入力ミスや転記ミスを防止
  • 情報不達や書類紛失等のトラブル防止

最大のメリットは、受発注情報をデータ化することで管理や再利用を容易にし、業務の自動化に繋がることで業務効率化が進み生産性が向上することでしょう。更にはデータ化が進めば業務間の連携が容易になるので、業務アプリケーション上で受発注から決済まで完結することも可能になるでしょう。このように業務そのものを改革するという点で、DX[3]の実現に貢献すると言えるのではないでしょうか。

中小企業共通EDI誕生の背景

EDI[4]は古くから利用されていますが、中小企業において広く普及しているとは言えない状況でした。それは中小企業にとって、簡単・便利に利用できるEDIではなかったからです。Faxやメールのように安くて、簡単に使えて、デジタル化された、もっと便利な仕組みが望まれました。中小企業共通EDIは、こうした背景から誕生しています。

「中小企業庁 平成28年度 経営力向上・IT基盤整備支援事業」
次世代企業間データ連携調査事業
https://www.itc.or.jp/datarenkei/
(2021/7/21 引用)

上記は中小企業共通EDI誕生の経緯となった実証検証であり、「中小企業が利用し易い、業種・業界の垣根を超えた、ビジネスデータ連携情報基盤」の実証検証です。この事業から得られた成果を展開し、普及促進に向けて具体化した制度や仕組みやサービスが、中小企業共通EDIに結実しています。

中小企業共通EDIの構成概要

ここで中小企業共通EDIの構成を振り返ってみましょう。主には次の特徴的な要素で構成されています。

  1. 共通EDI対応業務アプリケーション
  2. 共通EDIメッセージ
  3. 共通EDIプロバイダサービス(ESP)
中小企業共通EDIの構成(簡易イメージ)
『中小企業共通EDIの構成(簡易イメージ)』

「共通EDI対応業務アプリケーション」の利用により「共通EDIプロバイダサービス(ESP)」とデータ通信を行います。また、データ通信にあたり、EDIの国際標準である国連CEFACTの共通辞書に準拠して標準化された「共通EDIメッセージ」に基づくことにより、共通EDIプロバイダ同士が連携することが可能になります。

これによって、同じ共通EDIプロバイダと契約する企業間での取引は勿論のこと、異なる共通EDIプロバイダと契約する企業間でも取引が可能となります。つまりは、中小企業共通EDIの全利用企業が繋がるネットワークが構成されることになります。

中小企業共通EDIを利用する為に必要なこと

こうした中小企業共通EDIを利用する為に、ユーザ企業が(システム面で)行うべきことは次の通りです。

  1. 共通EDIプロバイダと契約する
  2. 共通EDI対応の業務アプリケーションを導入する

プロバイダや業務アプリケーションの選定にあたっては、「中小企業共通EDI認証制度」が役立つでしょう。提供されるアプリケーション・サービスが、中小企業共通EDI標準の仕様に適合していることを認証する制度ですので、「共通EDI認証製品・サービス」から選定すれば良いことになります。

共通EDI対応製品・サービスの認証制度について
https://www.edi.itc.or.jp/about-certificationsystem
(2021/7/21 引用)

こうして、プロバイダや業務アプリケーションが具体化されたとしても、導入を推進する人材に不安があるのであれば、一定の水準を満たした専門家による支援を受けられる制度が役立つでしょう。

共通EDI推進サポータ
https://www.edi.itc.or.jp/activityintroduction
(2021/7/21 引用)

このように、中小企業共通EDIの導入をサポートする制度や体制についても、実効性を伴っているからこそ、国の政策に盛り込まれたのだと言えるでしょう。

連携して拡がるEDIネットワーク

また別の資料ですが、国のIT化推進施策が「企業個々のIT化」から「企業間のデータ連携」へと進展していることが分かる図を引用したいと思います。

請求データ(電子インボイス)標準化の動向と中小企業共通EDI
『請求データ(電子インボイス)標準化の動向と中小企業共通EDI』

(令和2年12月9日) 第1回中堅企業・中小企業・小規模事業者の活力向上のための関係省庁連絡会議 資料3
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/katsuryoku_kojyo/katsuryoku_kojyo/dai1/siryou3.pdf
(2021/7/21 引用)

この図においても、中小企業共通EDIがネットワークの構成要素として期待されていることが分かります。なお、この図には含まれていませんが、金融EDI(ZEDI)[5]と中小企業共通EDIの連携により、受発注から決済までをシームレスに完結されることが期待されます。

従来のEDIは取引企業間の閉じたネットワークでしたが、現在ではグローバルな標準規格をベースとすることで、EDIネットワークを連携することが可能になりました。今までは考えられなかった相手先とも取引(データ連携)が可能になるかもしれません。これこそがDXと言えるのではないでしょうか。

税制優遇制度

また一方で、「経済財政運営と改革の基本方針2021」において「企業全体で取り組むデジタル投資を税制により支援し…」と記載されているように、2021年度の税制改正にて、DXに関する投資を促進する為の優遇措置が創設されました。

「令和3年度 税制改正」(3 法人課税)
「(1)デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制の創設」
https://www.mof.go.jp/tax_policy/publication/brochure/zeisei21/03.htm#a01
(2021/7/21 引用)

既に政策は具体的に動き出していることを実感して頂けたでしょうか。

今回のコラム記事では、中小企業共通EDIを取り巻く状況にフォーカスした内容になりました。中小企業共通EDI自体や、具体的なサービスにフォーカスした内容には、別の機会に改めて取り上げたいと考えております。

この記事のまとめ

  • 中小企業共通EDIの普及促進を図る旨が国の政策に盛り込まれた
  • 中小企業共通EDIは中小企業のDXを加速させる存在として期待されている
  • 普及促進に向けて実効性のある制度や体制が整備されている