記事内容
企業が持続可能な経営を目指して、DX(Digital Transformation / デジタルトランスフォーメーション)の推進を志向することが重要視されるようになりました。そして、DX推進の一環である「業務のデジタル化」を実現する手段として「クラウドサービスの利用」を原則とする考え方が主流になっています。
政府による「クラウド・バイ・デフォルト原則」の推進
日本においてもデジタル庁が発足し、社会全体のデジタル化が推進されています。デジタル庁では、政府共通のクラウドサービスの利用環境として「ガバメントクラウド(Gov-Cloud)」を政策の一つとして掲げています。政府情報システムや行政サービスですらクラウド化される流れにあります。
また政府は「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」(以降「基本方針」)を取りまとめており、この資料において「クラウド第一原則(クラウド・バイ・デフォルト原則)」として、「クラウドサービスの利用を第一候補として、その検討を行うものとする」と明記しています。
「基本方針」資料は改定を重ねており、2025年5月改定では、単にクラウドへ移行するだけでなく、クラウドの特性を活かしてコスト削減とセキュリティ向上を両立させる「スマートな利用」が強く推奨されるようになりました。この資料はクラウド化の指針書として非常に参考になりますので、目を落とされることをお勧めします。
「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」
https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e2a06143-ed29-4f1d-9c31-0f06fca67afc/a612d406/20250619_resources_standard_guidelines_guideline_08.pdf
(2026/6/12 引用)
クラウドサービスの利用メリット
「基本方針」資料においては、クラウドサービスの利用メリットを大きく以下の5項目にまとめています。
- 効率性の向上:リソース共有による費用低減、導入期間の短縮
- セキュリティ水準の向上:最新技術の採用、規模の経済による高水準な対策
- 技術革新対応力の向上:AIやIoTなどの最新機能の随時追加・試行
- 柔軟性の向上:リソースの容易な増減、短期間の試行運用
- 可用性の向上:大規模災害時の継続運用、過剰投資の抑制
さらに改定版では、今日のクラウド利用で特に重視されるポイントとして、「スマートな利用による新たなメリット」についても詳しく触れられています。
- マネージドサービス活用によるコスト削減:自らサーバーを構築・運用せず、事業者が提供する機能を組み合わせることで、運用コストを劇的に抑える
- セキュリティ対策コストの削減:サーバーのOS管理などをクラウド事業者に委ねる(責任共有モデル)ことで、利用者はサービス利用に集中できる
- IaC(Infrastructure as Code)による自動化:インフラ構築をコードで自動化し、作業時間の短縮とミスの防止、信頼性の向上を図る
クラウドに関する分類(モデル)
単に「クラウドサービス」と言った場合、人や状況によって連想するサービスが異なるかもしれません。例えば以下のように。
- IT企業などが利用する仮想サーバのようなクラウドサービス
- 個人が利用するGmailやGoogleドライブのようなクラウドサービス
クラウドにはさまざまな形態があります。クラウド・コンピューティングの定義や分類について、体系的に整理された教材として以下があります。「総務省 ICTスキル総合習得教材」[1]の一部になります。当資料の図を説明に引用します。
「2-2:クラウドのサービスモデル・実装モデル」
https://warp.ndl.go.jp/web/20221221000000/www.soumu.go.jp/ict_skill/pdf/ict_skill_2_2.pdf
(2026/6/12 引用)
クラウドを分類する観点として、NIST(米国国立標準技術研究所)では、サービスモデル(Service model)と実装モデル(Deployment model)を示しました。
[1]サービスモデル
クラウドサービスの構築・カスタマイズに関する役割分担による分類です。
また、コンピュータの階層を3層で考えた場合、1段目のみクラウド事業者に任せるのがIaaS、2段目まで任せるのがPaaS、3段目を含めて全て任せるのがSaaSです。
[2]実装モデル
クラウドサービスの利用機会の開かれ方による分類です。
クラウドサービスの利用検討プロセス
「基本方針」資料の改定版では、クラウド利用の具体的な進め方について、以前よりも「開発量の削減」と「最新技術の活用(モダン化)」を重視した考え方を示しています。
従来の検討プロセスでは、下図のように具体方針を示していました。
こうした従来の検討プロセスの基本線は維持しつつ、今日では以下のような観点で検討を進めることが推奨されています。
- SaaSの優先検討:開発量を減らし、スピーディに導入するために、まずはSaaSの利用を幅広く検討する
- 一括刷新(Rebuild)の原則:単に古いシステムをそのままクラウドに移すのではなく、クラウドのメリットを最大限活かせるよう、最初からクラウドに最適化した形で作り直す(モダン化する)ことが基本となる
- 「作らない」アプローチ:SaaSやマネージドサービスを徹底活用し、独自の開発(フルスクラッチ)を極力避けることで、将来の保守コストも抑制する
パブリック・クラウドのプラットフォーマー
SaaSやIaaS/PaaSの利用検討においては、それぞれパブリック・クラウドから検討することが推奨されています。
パブリック・クラウドについて、世界的に有力なプラットフォーマー(企業)である、Amazon、Google、Microsoftが提供するクラウドサービスを具体例として挙げてみましょう。よく3大クラウドプラットフォームとして紹介されています。
- AWS(エーダブリューエス/Amazon Web Service)Amazonが提供
- GCP(ジーシーピー/Google Cloud Platform)Googleが提供
- Azure(アジュール)Microsoftが提供
(補足)「Google Cloud Platform」は、2022年6月に「Google Cloud」に名称変更されています。
なお余談ですが、冒頭で紹介した「ガバメントクラウド(Gov-Cloud)」では、これらのクラウドサービスが採用[2]されています。
話を戻して、SaaSの利用検討を第一歩とする観点においては、もう少し視野を広げた方が(利用検討対象が)分かりやすくなると思います。SaaSに関しては、GCPとAzureではクラウドグループウェアとの連携の形になります。大まかに分類してみます。
SaaSとして挙げたクラウドグループウェアについて補足します。
- Google Workspace:GmailやGoogleドライブなどを内包したクラウドサービス
- Microsoft 365:ExcelやWordなどを内包したクラウドサービス
開発者ではない一般の利用者にとっては、これらで利用できるサービスをご覧になると、一気に身近な存在に感じられるのではないでしょうか。
バックオフィス業務へのクラウドサービス利用
現在では、さまざまな企業から目的別のクラウドサービスが提供されています。クラウドサービスの検討や評価をするにしても、ある程度の利用経験がないと難しくなっているかもしれません。
クラウドサービスの利用経験が乏しいとお考えの場合は、まずはバックオフィス業務に対してパブリック・クラウドサービスを利用してみることを検討されてはいかがでしょうか。
企業活動においては「生産機能」「販売機能」「事務・会計機能」が必要不可欠とされます。バックオフィス業務は「事務・会計機能」に該当します。一般事務を始め、経理、財務、人事、総務などの職種があります。
バックオフィス業務のデジタル化に対しては、クラウドサービスが利用しやすいだけでなく、大きな効果が得られやすいとされています。
クラウドサービスであれば、特に必要に迫られている部分であったり、手が出しやすい部分から徐々に取り組むことが可能です。こうした点からもクラウドサービスの利用メリットを実感できます。
この記事のまとめ
- 業務デジタル化にクラウドサービスの利用を原則とする考え方が主流になっている
- 利用検討時はSaaSを優先して「クラウド最適化」を意識したモダン化をすることが重要
- 身近なクラウドグループウェアの業務活用は始めやすくて発展も期待できる
