記事内容
先に公開したコラム記事では、ものづくり中小企業の方と意見交換する中で知った「日常業務が繁忙で新しい取り組みを進める余裕がないケースが多い」実情について触れました。
その中でも、対策の遅れが目立つように感じたのが「情報セキュリティ対策」でした。今回のコラム記事の内容は、中小企業の情報セキュリティ対策についてになります。
情報セキュリティ対策に取り組むにあたっては、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の資料を有効活用するのが近道です。今回のコラム記事では、まずご覧頂きたいIPAの資料を引用したり、リンクを張ってご紹介します。
なお、IPAの資料を利用するにあたって筆者は「セキュリティプレゼンター制度」[1]に登録しております。
情報セキュリティ対策の重要性
IT利活用に積極的に取り組んでいる企業であっても情報セキュリティ対策を「おざなり」な対策で済ませてしまったり、対策自体を「なおざり」にしているケースが見受けられます。経営者の方からは「利益に直接繋がらないから」との思惑を伺うことがあります。
しかし現代は情報化社会であり、情報セキュリティ対策の不備から問題を起こしてしまうと、企業にとって金銭の損失、顧客の喪失、事業の停止、従業員への影響といった大きな不利益を招くだけでなく、社会的な信用も失ってしまいます。
実際にランサムウェア(身代金要求型ウイルス)被害により事業活動が停止する事例も増えています。そうならないためにも、情報セキュリティ対策の情報に触れることで重要性を理解して、対策に目を向けて頂きたいと思います。
そう言われても実感が湧かない方は、まず(IPAが提供する)動画をご覧になることをお勧めします。ドラマ仕立てになっていて見やすいので気軽にご覧になってみてください。
「あなたの会社のセキュリティドクター ~中小企業向け情報セキュリティ対策の基本~」
https://www.youtube.com/watch?v=OP7O12w6KnQ
(2026/6/5 引用)
情報セキュリティ対策の情報入手に役立つサイト
一方で、情報セキュリティ対策が組織管理においても重要な要素であることを理解されている経営者の方であっても「なかなか手に付かない」「どうしたら良いか分からない」と感じられているようです。
そんな時には情報セキュリティ対策に関するさまざまな情報を入手して触れてみましょう。そのために役立つIPAのWebサイトをご紹介します。
「中小企業における情報セキュリティ対策の水準向上」を目的としたサイトで、対策を「知りたい」「学びたい」「始めたい」「続けたい」方々を後押しする活動がサポートされています。中小企業に向けた情報セキュリティに関する情報が集められており、参考になる資料の紹介や学習ツールが提供されています。
「情報セキュリティ対策支援サイト」
https://www.ipa.go.jp/security/sme/isec-portal.html
(2026/6/5 引用)
なお、補足としまして、「情報セキュリティ対策支援サイト」は2024年7月に運用を停止しています。しかしながら、提供されていた各種サービスの主なものには引き続きアクセス可能となっています。(各種サービスへのリンク)
中小企業の情報セキュリティ対策ガイドラインの紹介
情報セキュリティに関して、中小企業にとって非常に実践的なバイブルとなるのが本ガイドラインです。2026年3月に公開された第4.0版では、最新の環境変化に基づき内容が全面的に見直されています。
「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」
https://www.ipa.go.jp/security/guide/sme/about.html
(2026/6/5 引用)
本ガイドラインは、経営者が認識すべき指針をまとめた「第1部 経営者編」と、実務担当者が対策を実践する手順をまとめた「第2部 実践編」、そして具体的な社内ルール作成に役立つ8つの付録で構成されています。
[第1部 経営者編]
- 情報セキュリティ対策を怠ることで企業が被る不利益
- 経営者が負う責任(法的責任・社会的責任)
- 経営者が認識すべき「3原則」と実行すべき「重要7項目の取組」
[第2部 実践編]
- 自社の状況に合わせ、STEP1からSTEP4まで段階的にステップアップする手法
- はじめに取り組むべき「情報セキュリティ6か条」
- 組織的な取り組み(基本方針の作成、自社診断、ルール周知)
- 本格的な対策(資産管理、防御・検知、インシデント対応、取引先管理)
[付録]
- 中小企業のためのセキュリティ人材確保・育成の実践ガイドブック
- 情報セキュリティ基本方針(サンプル)
- 5分でできる!情報セキュリティ自社診断
- 情報セキュリティハンドブック(ひな形)
- 情報セキュリティ関連規程(サンプル)
- 資産管理台帳(サンプル)
- 中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引き
- 中小企業のためのセキュリティインシデント対応の手引き
同ガイドラインの改訂情報
第4.0版への改訂では、ランサムウェア被害の深刻化やサプライチェーン攻撃の増加、セキュリティ人材の不足といった社会動向を踏まえ、以下の重要な変更が行われています。
[1]「バックアップを取ろう!」を追加し、情報セキュリティ6か条へ
従来から推奨されていた5か条に、ランサムウェア対策として不可欠な「バックアップを取ろう!」を新たに追加し、「情報セキュリティ6か条」へと拡充されました。万が一のデータ消失や暗号化に備え、定期的なバックアップと復旧確認の重要性が強調されています。
[2]サプライチェーン対策(SCS評価制度)の考え方の取り込み
自社だけでなく、取引先を含めたサプライチェーン全体のセキュリティを強化するため、経済産業省が推進する「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度(SCS評価制度)」の考え方が取り込まれました。これにより、取引先からの要求に応えるための組織的な体制整備や防御策が整理されています。
[3]「セキュリティ人材確保・育成の実践ガイドブック」を付録として追加
中小企業において深刻な課題となっている「担当者の不在・不足」に対応するため、新たに付録1として「中小企業のためのセキュリティ人材確保・育成の実践ガイドブック」が追加されました。専門知識がなくても、自社でどのように人材を確保し、育てていくべきかの具体的な方策や事例が示されています。
情報セキュリティ基本方針の必要性
情報セキュリティに対しては社会的な関心が高まっていますので、多くの企業ではPCソフトウェアのアップデートやウイルス対策ソフトの利用といった技術的な対策に取り組まれていることでしょう。
しかし、どんなに技術的な対策が進んでも、それだけではリスクが軽減されることにはなりません。情報管理に対するルールが存在せずに社員各自がバラバラな対応を取っていたり、存在していたとしてもルールに対する社員の意識が低くては、情報セキュリティ対策による十分な成果を得られません。
企業それぞれの業態や業務などの実情に合わせた情報管理のためのルール「情報セキュリティ基本方針」(情報セキュリティポリシー)を作成し、そのルールを全社員が認知してしっかりと守る社内環境があってこそ、情報セキュリティ対策は満足な成果に繋がります。
「情報セキュリティ基本方針」は、企業がどんな脅威から、どんな情報を、どのようにして守るかを明確にし、全社員の情報セキュリティへの取り組みをルールとして定めたものです。例えるなら情報における「防災マニュアル」のようなもので、「情報」という企業の大切な財産を危険から守るために大変重要なものです。
情報セキュリティ対策は事業継続の観点からも重要
この例のように、情報セキュリティ対策は「備え」であるとも言えるのです。現代の商取引では、メールのやり取りも含めて取引先と情報が繋がっていないことはないでしょう。自社でどんなに情報セキュリティ対策に気を配っていても取引先の不備から問題に巻き込まれたり、逆に自社の不備から取引先に損害を与えてしまうリスクもあります。
防災対策と同じで「絶対安全」はありません。しっかりとした準備をしておくことで有事の際には企業が被る損害を著しく軽減してくれるでしょう。事業継続の観点からも企業にとって大変重要なものです。
このように、情報セキュリティ対策に取り組むにあたっての第一歩として、「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」は最適です。まだご覧になっていなければ、ご確認の上で取り組んでみてはいかがでしょうか。
この記事のまとめ
- 中小企業では情報セキュリティ対策の遅れが見受けられる
- 情報セキュリティ対策の実施には「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」が役立つ
- 情報セキュリティ対策による「備え」が有事の際の損失軽減に繋がる
