記事内容
活動内容のコンセプトを再確認
これまでの活動内容のコンセプトを再確認したいと思います。先に公開したコラム記事にて、IT導入および活用を失敗しないための提言を行いました。
- トライアルが有効である
- トライアルと割り切って安価に実施するのも一手
これらを起点として次のようなコンセプトを定めました。
「少ない費用で速やかに導入して使ってみて、経験を積んでからステップアップする」
そして具体的なモデルとしてIoT関連の事例をご紹介してきました。これが今までの流れです。IoT関連に注力していた背景には、先に述べたコンセプトに適合しやすかったことと、「中小企業にとっても新たな取り組みのターゲットになるだろう」との思惑がありました。
IoT関連の事例として「作業実績データの管理」や「機械稼働の可視化」といった具体的なモデルを提示することを通じて、ものづくり中小企業の方々との接点が増えました。
単に資料で事例を紹介するのではなく、簡単なモデルであっても目の前で実際に動作するデモを見て頂くことで「実感が湧いた」と興味を持って頂けました。
活動から感じ始めた問題点
こうした活動を暫く続けておりましたが問題点を感じ始めました。デモから先へは話が進まないのです。
勿論、コンセプトを理解した中小企業の方が自力で取り組まれることは可能だと思いますので、そうであれば独自に推進して頂ければ良いと思います。このようなケース以外で考えてみましょう。
ものづくり中小企業の方々と意見交換した中で感じられたのは「IoTのような方策が有効なのは分かるし取り組みたいが余裕が無い」といった思惑でした。
つまり「それ以前の問題が山積」といった実情を感じさせられました。この思いを強くした出来事をお話したいと思います。
中小企業におけるIT活用の課題を実感した出来事
公的機関が主催した中小企業向けIoT研究会の成果報告会に参加したことがあります。IoT導入を希望する中小企業が参加しており、一年間の活動結果の報告を行う会で10社弱の報告がありました。
内1社だけ「センサー使用により製造データを収集して経営に役立てる」といったIoTらしい内容だったのですが、他社は(文書管理や顧客管理といった)「ITツールを導入して業務効率を改善した」といった内容だったのです。
違和感を感じながらも報告を聴いておりましたが、最後のファシリテーターによる総括を伺って実情を知りました。要約すると次のようなことでした。
「当初はIoT導入を目指して活動開始したものの、日常業務との兼ね合いなどから予定通りに進捗しなかったため、途中で方針変更して「実現可能で且つ業務に役立つ」活動を進めた」
結果的に現段階ではIoTどころではなかったため、「IoTに取り組む余裕を作るために業務負担を軽くすることから実現した」ことが今回の成果だったとの取りまとめでした。
中小企業のIT活用を意識した新たな取り組み
このような経緯を踏まえて『ICTイノベート』でも新しい方向性に取り組むことにしました。
冒頭のコンセプトに沿った「安価にお試しモデル」として、IoTを推すだけでなく中小企業のIT活用を広く意識した上で具体化に取り組みたいと考えております。
一例ですが、以下のような機能を(単体や組み合わせによって)IT活用の形として具体化できればと考えています。
- データ収集(センサー、カードリーダー、バーコードリーダー)
- データ連携(分散した形式が異なるデータの連携)
- データ分析(効果的なBIツール活用、可視化)
取り組みの一例をご紹介
現在着手しているのは、電子FAXからのデータ抽出です。データ収集の領域になると思いますが、PDFや画像ファイル上の文書からテキスト抽出してデータ利用するモデルになります。
現在では無料ツール[1]を使用しても可能なことです。参考までにテスト結果を下図でご覧ください。
当サイトの「活動理念」文書の画像を対象とした処理結果になります。ご覧の通り完璧とは言えないまでも、ほぼ認識できています。
しかし、この結果をご覧になって「こんなレベルでは使えない」と判断される方もおられるでしょう。
利用局面や期待値はそれぞれなので一概には言えませんが、筆者の考えでは性能(精度)の落としどころを見極めて適切な利用局面で用いれば、「お試し」として実用できそうと考えました。
まだこの段階では技術的な検証に過ぎませんので、業務アプリをイメージしたデモが形になりましたら改めてご紹介することを考えております。今回のコラム記事は状況報告になってしまいました。
その後の追加情報
電子FAXからデータを読み取る業務アプリのデモを具体化しました。
また、この記事でご説明した「安価にお試しモデル」は、その後「お試しIT活用ii」として具体的に取り組んでおります。当サイトからも情報発信を行っております。
この記事のまとめ
- IoTデモを通じて、ものづくり中小企業の方と意見交換する機会が増えた
- 中小企業では日常業務が繁忙で新しい取り組みを進める余裕がないケースが多い
- IT活用の「安価にお試しモデル」によって支援に取り組む