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  • エッジでの可視化デモでIoT活用を実践

  • エッジでの可視化デモでIoT活用を実践
  • 公開2017/12/28  更新2022/06/23

  • 初期段階のIoT活用例として、クラウドを利用しないエッジコンピューティング構成でセンサーデータを可視化するデモを実践しました。

記事内容

前回前々回のコラム記事では、クラウドを利用したIoTデモをご紹介しました。

IoT(Internet of Things)の名称から、インターネットに接続して利用することを思い浮かべますが、クラウドの利用は敷居が高いと感じられる方もいらっしゃるでしょう。また、IoT検討初期段階においては、検証に目途が付いてからクラウド利用(契約等)を具体化したいケースも有り得るでしょうし、小規模構成であればクラウド費用を抑えたいと考えるケースもあるでしょう。

クラウドを利用しないで検証を進める方法として、センサー等のデバイスに近い位置にある装置に処理をさせる「エッジコンピューティング」の概念に基づいたデモを構築してみました。システム構成を下図でご説明します。

SensorTagとRaspberry Piを利用したデータ可視化デモの構成図
『SensorTagとRaspberry Piを利用したデータ可視化デモの構成図』

以前ご紹介したIoTデモの構成図(「SensorTagを利用したデータ可視化 IoTデモの構成図」)と比較して、図的にはクラウドの部分がLANに置き換わっています。

SensorTag(センサータグ)[1]のセンサーデータを可視化するにあたって、社内LAN等の同一ネットワーク上に存在するエッジ装置「Raspberry Pi(ラズベリーパイ)[2]にPCのWebブラウザからアクセスします。

クラウドを利用したデモでは「Node-RED(ノード・レッド)[3]によってセンサーデータを可視化するアプリケーションを作成していました。Node-REDはRaspberry Pi上でも動作します。同じソフトウェアを利用することで、クラウド向けに製作したアプリケーションを簡単に移植することができました。逆に言えば、エッジ側から開発を進めた場合でもクラウドへの展開が容易であることを示しています。

早速ですが、エッジ装置によるセンサーデータ可視化画面の例をご紹介します。

SensorTagのデータ可視化例(エッジ版)
『SensorTagのデータ可視化例(エッジ版)』

また、SensorTagと同様の検証用マルチセンサーである「ALPSセンサネットワークモジュール[4]でも可視化画面を製作しておりますので、参考までにご紹介します。

センサネットワークモジュールのデータ可視化例(エッジ版)
『センサネットワークモジュールのデータ可視化例(エッジ版)』

画像のWebブラウザ上のURL欄を見て頂ければ、ローカルなIPアドレスにアクセスしていることを分かって頂けると思います。クラウドで製作した画面と区別する為に配色を変えていますが、これらはクラウド版と同じ機能を実現しています。

システム構成図でご紹介した構成よりも更に小規模な構成としては、社内LANに接続せずにWi-Fiルータ配下で接続しても同じことが実現できます。

しかし、このような構成であればメーカーが提供する専用アプリを使用する方がお手軽だと思われます。SensorTagのテキサスインスツルメンツ社やセンサネットワークモジュールのアルプスアルパイン社では、センサーを管理し、可視化する専用アプリ(スマートフォンやタブレットで動作)を提供しています。

専用アプリを使用する場合は、Raspberry Piのようなゲートウェイの役割を果たす機器を用意する必要はありません。

では何故、システム構成図のようなご提案をするのかと言うと、社内LANに接続することで工場等に設置したセンサーのデータを離れた事務所等でモニタリングすることが可能になるからです。クラウドを利用しなくてもクラウドに類した運用を行うことを狙ったご提案となります。

とは言え、複数のセンサー等のデバイスを一覧で管理するには、クラウドあるいは専用サーバを利用することが避けられないでしょう。

まずは、今回のようなお手軽な方法で「お試し」をしてみて、どのようなセンサーを使用して、どのようなデータを収集するのか、といった目途を付けてからクラウド利用を具体的に検討してみては如何でしょうか。まずは「できるところから着手してみる」ことをお勧めします。

この記事のまとめ

  • IoT検討はエッジコンピューティングからでも始められる
  • エッジによる検証に目途が付いてからクラウド展開する方法もある
  • 小規模であればクラウドを利用しなくてもデータ可視化は可能
  • 検証に着手して結果を得ることにより次のステップへと繋がって行く