記事内容
1月末に開催された展示会[1]に、活動に参加しているNPO法人[2]が出展しまして、IoTデモを動態展示しました。展示会は無事に終了しました。プロモーションの面からは事前にご案内すべきでしたが、間に合いませんでした。
IoTデモの内容は「センサーを取り付けた機関車模型をレール走行させ、センサーから得られたデータによって模型の動作を把握する」といったものです。
デモによって目の前の模型の動作に連動するPC画面上の表示情報を見て頂くことで、例え模型が見えない場所であっても模型の稼働を管理できることを実感して頂けたと思います。そして、IoTの有効性を身近に感じて頂けたのではないかと考えております。
展示会のIoTデモに協力する運びとなったのは、当サイトで度々ご紹介したセンサーデータ可視化画面を「利用したい」とお話しを頂いたことによります。打診を受けた時点で、機関車模型によるデモ内容は決定していました。IoTデモとして構築する上で次のような懸念を持ったので伝えました。
- クラウドの利用は、リアルタイム性を要求されるデモには不向きであり、目の前の模型の動作と画面表示には少なからずタイムラグが生じる
- 展示会場のネットワーク環境は不確定要素が多い為、依存せずに閉じたLANによるネットワーク構成とした方が安定したデモとなる
そして協議した結果、前回のコラム記事でご紹介した、エッジコンピューティングによるセンサーデータ可視化を推進することになりました。システム構成を下図でご説明します。

模型環境以外は、これまでご紹介した構成を踏襲しています。「Raspberry Pi(ラズベリーパイ)」[3]上では「Node-RED(ノード・レッド)」[4]で製作されたアプリケーションが稼働しており、マルチセンサー[5]からのデータ受信や可視化を制御しています。
そして、Wi-Fiルータが構成するLAN内に存在するPC(タブレット)のWebブラウザからアプリケーションにアクセスします。
一方で模型環境については、機関車模型の後部側面にセンサーを設置して8字型のコースを周回させます。コース中に2つある直線部分の一方にはトンネルが有り、もう一方では固定設置したライトによる光がセンサーに照射されるようにします。
今回の企画を頂いた当初は、既存のセンサーデータ可視化画面をそのまま使用することになっていました。1月上旬に初めて模型側と合わせた動作確認テストを実施したのですが、その結果「分かり辛いし、デモとしての面白味に欠ける」と感じました。
そこで、今回のIoTデモで利用するセンサーを絞り込み、デモに合わせて可視化画面も再構築することにしました。
今回のIoTデモでは、模型の動作を捉える為にマルチセンサーに含まれる加速度センサーと照度センサーを利用しました。センサー数値を表示するだけでなく、数値を基に模型の状態を判定し、文字とアイコンで表示します。
加速度センサーで判定しているのは、模型が「停止中」なのか「移動中」なのかです。ちょっと追加で話のネタに、停止時に模型が置かれた姿勢を画面反映するサブイベント「事故発生」も入れてみました。
照度センサーで判定しているのは、模型が「トンネル」を通過中なのか、ライトの光を受けている状態「ライト受光」なのかです。
センサーデータを可視化する画面をご紹介します。

「ライト受光」イベントをトリガーとして「周回数」としてカウントアップし、イベント間隔を「周回タイム」として算出する機能をIoT活用例として追加しています。
また、デモとしてお見せする部分ではありませんが、展示会運用面を考慮すると、誰でも(展示員を選ばずに)操作が可能であることが望ましいので、(可視化画面と同様の仕組みで)デモ操作用のインターフェース画面を並行して製作しました。画面からセンサー計測の開始や停止を操作できます。

上図の画面に表示されているように、センサーデータをCSVファイルとして出力する機能も持っています。今回のデモではCSVファイルは用いませんでしたが製作面で役立ちました。
今回の準備期間では、模型と合わせたアプリケーション・テストを3回しか行えませんでした。最初のテストの2週間後に2回目を実施し、最後は展示会前日の物品搬入前に数時間行えただけでした。
2回目のテスト時に、模型をコース走行させたデータをCSVファイルとして収集しておきまして、このデータを分析することで判定ロジック等を調整しました。これが功を奏して最終テストでは大きな問題もなく短時間で完了することができました。
データを収集し、データを活用することがカイゼン活動に有効であることを実感できました。
このように、デモで見て頂いた部分以外にもIoTの有効性を感じられる点がありましたのでご紹介しました。今回のデモを例にとってIoTの有効性を振り返ってみます。
模型が周回を続けているのか?、電池消耗で走行速度が遅くなっているのか?など、目の前で見ていれば一目瞭然ですが、模型が見えない離れた場所であっても、画面で周回数や周回タイムを確認することで稼働を管理することができます。また、データを基に客観的に判断することで、現場では見落としてしまった問題点にも気付けるかもしれません。これだけに留まらず、IoTは様々な可能性を秘めているので注目されているのです。
なお、今回は展示会ということもあり「見せる要素」を重視しましたが、監視の運用であればデモのように画面を見続けるのではなく「センサー数値がしきい値を超えたら担当者に自動でメール送信し、メールを受けた担当者は状態を可視化画面で確認する」といった運用の方が実用的かもしれませんね。技術的には色々な選択肢があります。
IT技術は色々な選択肢を実現可能にしてくれます。効果的に利活用して思い描いた成果に繋げてみませんか。
この記事のまとめ
- 展示会に出展するIoTデモ用のアプリケーションを製作した
- 動作する模型の状態をセンサーで捉えてリアルタイムに可視化した
- 可視化画面によって現場から離れていても状態を把握できることを示した
- 運用の為には誰でも操作できるインターフェース画面が必要であった
- データを収集し、分析して活用することで作業が効率的に進んだ
- IoTはデータに基づいた管理を可能にする